2022年09月03日
夏の濃厚なひかりが、ゆらゆらと風にまとわりついて
でも、もう最後だよ、という
たらり、と
ひとすじの汗が、8月をつたう
夏の中で、もう夏はいない
わたしは、わたしの中に
思い出を物色しながら
明日のぶんの夏を探す
雨が降ったらあきらめよう
暗くなったら目をさまそう
耳だけは
セミの声を、いつまでも聞いていた
珍しく大雨で
仕事にいこうと玄関を開けたけど、あまりの雨に思わず閉めてしまった
もう一度開けてみる
湿気と音が膨張していて、空気が待ちかねたように、むわむわと入ってきた
隙間から、傘をさそうと下をみたら
雨粒にまじって、直径2センチくらいの丸い透明なものが一つ、プルンと跳ねた
一瞬、水晶かと思ったけど、プルプルしている
なんだろう
わからないけど、雨の滴がまんまるなゼリーになったみたいに見えて
きれいだなあ、としばらく眺めていた
雨は、傘をばらばらと叩いている
指をのばしてつついてみた
ぷんっと、はじけて、そのまんまるなものは、消えてしまった
それからわたしは仕事に行ったけど、あれは消臭ビーズだったんじゃないかと思い至った
まあ、本当にきれいだったから何でもいいか
消臭ビーズだったとしても、なぜわたしの目の前に一粒だけ置いてあったのか
かぐや姫なら、きっと欲しがるだろうな
自分に求婚する殿方に、「雨を閉じ込めた丸い透明な粒を、手のひらにのせてみたい」というのだ
そんな風に考えていたら、神さまからのプレゼントに感じられてきて
触らなければよかったな、とちょっと後悔した