なんでこんなに赤いのか
とびきりの赤は、虫食いだらけの葉から漏れる光で、さらに一際赤くなる
偶然、昔の日記をみつけた
そこにあるのはわかっていた
読んでみよう、と思った
どうしても歌を歌いたくて、ようやく、本当にようやく動き出してから、約3年間の記憶がよみがえった
3年とはいえ、数ページしかない
ただ、濃密に、私がすっかり忘れていたことが書いてあった
当時、歌い手が曲を作るパターンはまだ少なく、でも、そんな時代に必ずなるから、と、オーディションスクールでシンガーソングライターコースを勧められた
見よう見まねで曲を作って、結果、初めてのオーディションで、私はスカウトされた
すぐにデビューの日程が決まり
曲決め
プロのアレンジによるレコーディング
イベント
お披露目
ライブ
レコード会社、所属事務所の打合せ
なんかよくわからないうちに、流れるように、すべてが自分の前を通りすぎて行った
結局、二回デビューが延期になった
そのまま、契約が切れ、3年が経過していた
このことを、私は、何となく忘れていた
日記には、当時の自分の戸惑いがことあるごとに書かれていた
私は、業界の人をひとくくりにし、信じることができず、いつも疑っていた
自分の表現も、常にこれでいいのか自問自答を繰り返し、自分を否定し続けていた
自信がなくて、孤独だったようだ
言い訳ばかりしていた
何だか、すごく泣けてきた
きっと、最初に見いだしてくれたプロデューサーは、私の最初のファンだった
話が流れるのは、タイミングもあり、よくあることだ
そのたび、何とか私を引き上げようとしてくれた大人が、何人もいたはずだ
私の中に、可能性を見て
光のもとを見付けてくれたのだ
それがわからなかった
というより、自分にそんな価値があると思えなかった
それはあらゆることに、そのように伝わったはずだ
私は一人で、その孤独に耐えながら、必死に曲を作っていた
その曲が、私の手の中に残り、今、私を生かしてくれている
怯えながら、そんな弱い自分と戦いながら作った曲は、宝物だ
私は、私の一番のファンだ
とてもいい曲を、本当にありがとう
沢山期待を裏切り、沢山傷ついて、沢山辛くて、誰にも言えず、ただ頑張って作った歌を、今の私は、割りと気楽に歌っています
あなたと一緒に、歌っていきたいと思っています
あの時の、私のまわりにいた大人たちに
あの時の、自分に
心から感謝を