2019年07月23日

実家の目の前に、新幹線の車両基地が出来つつある
ずっと向こうまで田んぼだった所に、突如現れたでっかい建造物
工事現場は好きだ
夏の夕暮れを背に、今日の仕事は終わりとばかりに、疲れた体を休めているクレーン
さしずめ、これからお風呂に入ってビールでも飲もうかね、という感じ
小さい私が居た景色は、かき消えてしまったけど
それもいいか、と今は思う
私は変化していくことに、チクリと痛みを感じていた
でも、例えばこの基地が無かったとしても、あの頃と全く変わらぬものが目の前にある訳ではない
すべては変化していく
どちらにしても「あの頃」は、私の胸の中にしかないのだ
幼なじみのお墓参りに行った
亡くなって二年
やっと行くことが出来て嬉しい
汽車で一時間弱
そのあと、バスで一時間強
彼女の母親と、ちょっとした小旅行だ
海と山の隙間を、バスは器用に走っていく
最近世界遺産に登録されたこともあって、バスの窓からちらほらと見える教会は、TVでみたような
情緒的な景色だ
梅雨明け間近の夏空は、入道雲と空の青のコントラスト
それに、くらりとする程の山の緑と、海の深い紺
ひっきり無しに響く蝉の声
いつの間にか、夏のど真ん中にいたんだなあ
切ったばかりの髪のおかげ(?)で、うなじがジリジリと暑い
ひさめ、いいとこにいるんだね
彼女は海が大好きだ
余計なものが無い人
自分をよく知っていて、何が必要で、何が不要かをわかっていた
だからいつも、ありのままそこにいるような感じの人
最後の最後まで、親にすら、自分の苦しみをもらさず
いつもと変わらぬ彼女で、旅立ったそうだ
私は病気のことも知らなかったから、彼女が亡くなったあと二週間くらい、夜になると、心臓が詰まるかと思う程泣いていた
あんな辛い涙は、初めてだった
あれは、自分のための涙だった
彼女に何も出来なかった自分のための
泣くことで、自分の傷を癒していたんだな、と今は思う
一人よがりだけど、そうやってバランスをとった
彼女は鍼灸師だった
友人には一人甥っ子がいて、彼女が亡くなるほぼ同時期に、鍼灸師になったそうだ
とても離れて暮らしていたし、誰も何もいってないのに、自ら鍼灸師を目指し、初志貫徹したらしい
私は、その子は彼女の息子でもあるんだな、と思った
彼女自身に子供はいなかったけど、きっと、そういうこともあるんだろう
線香のいい匂いがして
ふなむしが走った
んー
今年も暑くなるなあ