月がわり写真展と題しまして、毎月トップの写真にテーマを添えて、お届けしています(^^)
9月のテーマは「雲のお話」
いつもと趣向を変えて、短い昔ばなしとなっております
こちらは、父がふと口にした子どもの頃の思い出を元に創作したものです
どうぞ、心の空きスペースに(*^^*)
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昔々
お山の上に、おきつねさんと呼ばれている神社がありました
真っ黒い絵の具で塗りつぶしたような、ある夏の夜
誰もいるはずのない山から、どんどこどんどこ太鼓の音が聞こえてきて
夜中じゅう鳴り響きました
おきつねさんが騒いどる
ふもとの人達は、恐ろしいような、不思議なような、何とも腹の座りの悪い気持ちで一晩過ごしました
次の日
大雨が降り、どーん
六畳の部屋をゆうに潰してしまうくらいの石が落ちてきて
女の子が1人、下敷きとなりました
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女の子はもらわれっ子で、小さな遊郭の2階に住んでいました
学校をよく休んで、みなを取りに海へ行ったり、芋を掘りに畑へ行ったり
そのせいか同級生は、ぼんやりとしか顔を思い出せませんでした
お葬式の日
なぜ石が遊郭へ落ちたのか、大人たちは、その様子をさも実際に見た、という言いぶりで話し込んでいました
子供たちは少しおどおどしながら、お焼香の列に並びました
前の晩、おきつねさんが騒いどった、あれは何やったとやろか
確かめに行く者はおらず、よそもんのばちかぶったな、と、みんな可哀想に思いながらも、どこかほっとした顔をしていました
***
火が飛ぶと、海が荒れる
太鼓が鳴ると、山が揺れる
おきつねさんの前ば通ると、かろうとった魚が石に変わっとる
山へ1人で入ると、隠される
戻って来ても、魂ばぬかれとる
おきつねさんは、人の魂ば魚んごと喰らうとやろか
それとも、難ば知らせてくれたとやろか
ふもとの人達は、それからもおきつねさんを遠くから拝みました
今となっては昔々
おきつねさんがどこにあったかは、定かではありません









